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ITI Congress Japan Tokyo 参加と骨造成(造成材料の種類について)

2022.05.28-29とITI Congress Japan Tokyoに参加してきました。
両日とも1500~1700名ほどの先生方が参加されたようです。
コロナの流行に伴い、学会や勉強会が軒並みWeb開催となっていたため
久々の対面形式・現地会場でのCongressとなりました。

学会がWeb開催の、ここ数年の期間は、オンラインで1週間程度、講演内容が確認出来るため、好きな演題、気になる演題が何時でも聞ける、繰り返し聞けるといったメリットがあり、これは助かる!!と当初は重宝しておりましたが。
コロナが長引く中、多くの参加学会や、勉強会がWeb形式で行われていくと。
慣れとは怖いもので、
ついつい、いつでも聞けると言う気のゆるみが生じて、結果、聞き逃してしまうといった事が、恥ずかしながらありました。

今回は、数年ぶりの対面式の会議(勉強会)だったので、その瞬間しか聞けず、聞き逃すまいと緊張感を持って臨めました。

初日は
審美と機能性を目的としたインプラントのソフトティッシュマネジメント
歯周組織再生療法(再生療法における抜歯基準)
インプラント上部構造のトラブルを起こさないために
2日目は
ITIスタディークラブ最新臨床セッション
新しい骨補填剤と硬組織欠損への対応
インプラント治療の合併症対応と撤去基準の提案
の演題を拝聴してきました。

今回は、2日目の演題、関連して骨補填剤について少し触れたいと思います。

デンタルインプラント治療は、歯や歯肉を治療対象とするのではなく、顎骨を対象とした治療となります。つまり歯周病や、外傷等で歯槽骨(歯を支えている顎の骨)をすでに失ってしまっている場合。
そのままではインプラント治療を選択できないことがあります。

そんな時に行うのが、骨造成(GBR:Guided Bone Regeneration)という事になります。
ではどうやって骨を増やすのでしょうか?

造成に使用する移植材を分類すると
①自家骨 ②同種骨(他家骨) ③異種骨 ④代用骨(人工骨)となります。

①の自家骨はそのまま、自分の骨です。自分の骨なので拒否反応はなく、感染しにくいとった最大のメリットがあります。一方で、骨採取部位と造成部位2か所処置をする必要があり、傷口が2か所必要になる場合が多い事や、
造成しても、作った骨よりも最終的に出来上がる骨のボリュームが減りやすいと言ったデメリットがあります。

②の同種骨は、同種なので同じ人間の骨ですが、他人の骨になります。当然他人の骨を取ってきて、使用しても感染を起こしたり、生体拒絶反応が出ます。
生きている人から取るわけにもいきませんので、海外のボーンバンク等の御遺体から採取
した骨組織に化学処理を行い、他人の体に入れても拒否反応が出ない様に製造したものになり
ます。*日本国内未承認
欧米はキリスト教の方が多く、無くなった方は魂が尊重され、ご遺体自体はそこまで重きを置かない考え方があるため、無くなった他人骨を使用することにあまり抵抗が無いようですが、日本は仏教の考えがある程度浸透しており、ご遺体を仏様と呼ぶように、他人の亡くなった方の骨をインプラント治療に使用するには気持ち的に抵抗を感じる患者さんや先生が多いようです。(材料としては論文を読む限り問題はありませんが、私も亡くなった他人方の骨を私用することには、倫理的抵抗を感じますので当院では使用していません)

③の異種骨は異種なので人間以外の骨という事になります。もっとも有名な異種骨は牛骨から、作られています。当然このままでは人間の体に入れると、感染+拒絶反応のダブルパンチとなりますので、蛋白を除去しミネラルだけの状態に加工して使用されます。
②の同種骨と比べ、倫理的な問題点はクリアできています。(ヒンズー教の方にとって牛は神聖な動物とされていますので、ヒンズー教の方に使用するのは問題となるでしょう)
牛という事で、狂牛病を知っている方も多いと思いますが、この異種骨使用による、狂牛病(プリオン)の感染のリスクは問題ないとされています。
これは私見ですが、これまでなかったのでこれからもないとは言えない、出来れば使用したくないなぁ・・と考えております。
海外ではインプラントのための骨造成に多く使用されている材料になりますが、日本国内では、歯周病の骨欠損に対する骨造成への使用は承認されていますが、インプラントに対する骨造成材料としては未承認となっています。

④代用骨(人工骨)
日本国内で承認されインプラント埋入部位に使える人工骨材料は、炭酸アパタイト(商品名:サイトランス®グラニュール)です。骨や歯の主成分は水酸化リン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)であり、炭酸アパタイトはその一種。
これまで様々な材料が合成されて来ました。人工骨は自家骨のように採取部位の処置が必要ないメリットや、同種骨・比較すると、倫理的な問題や感染の問題をクリア出来る材料であると言えます。

これ以外に新たにボナーク®といった人工骨材料がインプラント部への骨造成に承認されました。この材料はリン酸オクタカルシウムを主成分とし(リン酸オクタカルシウムもざっくり、アパタイトのお友達)そこにアテロコラーゲンを混ぜた材料です。
サイトランスグラニュールは顆粒状の人工骨材料なのに対しボナークはコラーゲンを混ぜたことにより立体的形状にすることが出来、ディスク状・ロッド(円柱)状の2形態で販売となっています。

骨造成処置時に顆粒状では操作性が悪く感じることがあり、ボナークの立体的な形状は魅力を感じるところではあります。
しかし、立体形状にするために配合せざるを得なかったアテロコラーゲンですが、ブタ真皮由来のコラーゲンであり。
人工骨のメリットの1つである、完全化学合成のため移植材由来の感染リスクが無いと言ったメリットが無くなってしまったところは残念に思います。
当然と研究開発され、国内使用承認されたものなので、ブタ由来の感染症にかかる報告は
あがっていません。

当院では基本的に①の自家骨 ④の人工骨(サイトランス・グラニュール)を使用して骨造成を行っています。
時の流れと共に、知識・技・理念・材料は変化していきます。
今後もルーティンワークにしている、学会参加や勉強会による知識・技術の更新を行っていきたいと思います。

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