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上顎のインプラント第三弾 上顎洞底挙上術(クレスタルアプローチについて)

さて、上顎にインプラント治療を行うにあたり、上顎骨には上顎洞という空間があり。上顎にインプラント治療を行う場合にはこの上顎洞の底までどのくらいの骨量が必要なのか?必要な骨量が足りない場合はどうするのか?について第一弾でお話しました。
第二弾で、上顎洞底挙上術のうちラテラルウィンドウテクニックとソケットリフトについて説明をしました。

今回は、第三弾として、表の②-3“クレスタルアプローチ”について説明をしていきます。

クレスタルとは歯槽頂を意味し、歯槽頂からアプローチするという意味では、ソケットリフトとアプローチ方法が似ているため、上記票の分類とは別のアプローチ方法といった視点から分類して、以下の表のように分類して考えることもできます。

少し前回のおさらいからしていきますが、
上顎の歯槽頂から上顎洞底までの距離(以下:骨高径)が、5㎜未満の時は、ラテラルウィンドウテクニックを適応し、5㎜程度あるときはソケットリフトを適応してインプラント埋入を行うことが多いと、説明をしました。
骨高径が5㎜未満と少ないときは、ラテラルウィンドウテクニックを適応しインプラント埋入を行うわけですが
、ラテラルウィンドウはソケットリフトと比較し、外科的侵襲が強く、患者さんの負担が大きいといった欠点があるわけです。
そこで、既存骨骨高径が5㎜未満の時に行う、患者さんへ比較的低侵襲な新しい術式として、クレスタルアプローチといった術式が行われるようになりました。処置の流れを下に示します。
*クレスタルアプローチは上顎洞底までの既存骨が5㎜未満症例のうちの既存骨が1~3㎜程度のものが最適応となります。


① 上顎洞底までの距離が1~2㎜程度になるまで既存骨を、ドリルを使い削っていく
② 残った1~2㎜の上顎洞底に残った骨を、オステオトームや超音波切削器具を用い、挙上する
③ ②で開けた穴より剥離子を挿入し上顎洞粘膜を剥離していく
④ 埋入予定のインプラント体が埋入可能な深さまで、上顎洞粘膜を剥離していく
⑤ ②の穴より、移植骨を移植していく
⑥ インプラント体を埋入する

ラテラルウィンドウ・クレスタルアプローチとも、上顎洞粘膜を専用の器具を使って剥離して、骨移植のスペースを作り、そこに移植骨を補填したうえで、インプラント体を埋入するといった術式です。
ラテラルウィンドウは、インプラント体を埋入するための穴からではなく、上顎歯槽突起の側壁から穴をあけて上顎洞粘膜を剥離していくため、歯槽突起の側壁が見えるように大きく歯肉を切開剥離する必要があるのに対し、クレスタルアプローチは、インプラント体を埋入するための穴を利用して、そこから、上顎洞粘膜を剥離していくため、本来インプラント体を埋入するために必要な歯肉の切開・剥離の量で済むわけです。
そのため、患者さんに対する手術侵襲や、術後の腫れ、疼痛を抑えることができるといったメリットがあります。
一方で、クラスタルアプローチは、インプラント体を入れるための小さな穴(直径3~4㎜程度)から上顎洞粘膜を剥離していくため、ラテラルウィンドウのようにある程度大きな窓開け(側壁に開ける骨窓のこと前回のブログ参照)をする場合と比較し、術野に視野性や器具の到達性に劣るといったデメリットがあります。
このデメリットを、改善したスリットリフトといった術式も報告されていますが、スリットリフトについてはまた別の機会に、お話しします。
下に、ソケットリフト・ラテラルウィンドウテクニック・クレスタルアプローチのそれぞれを比較した表を記載します。

3回に渡り、上顎洞へのインプラント埋入手術について、ブログで報告させていただきました。
上顎にインプラント治療を考えている方の目に留まり、治療方針決定の一助になることを祈っております。

*参照
日本口腔インプラント学会 第34巻 4号 クレスタルアプローチの可能性
医歯薬出版 日本口腔インプラント学会編 口腔インプラント治療指針2020
(株)インプラテックス K2バーティカルサイナスアプローチ 

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